2021 年 8 月のサイトリリース以降、引用ドットコムはビジネス書を中心に書籍の引用・参考書籍の調査を進めております。
2021 年 11 月には調査書籍が 100 冊を越え、様々なビジネス書から引用されている「古典」的な本があることが分かってきました。
この記事では、2022 年 1 月現在の調査で、引用・参考された数が多かった順に上位 5 冊を紹介します!
では、早速ランキングを見ていきましょう。
第 1 位は、経営学の巨匠マイケル・ポーター氏の代表作『競争の戦略』でした!
原著は『Competitive strategy: techniques for analyzing industries and competitors』(1980 年)で、ビジネス書としては空前のベストセラーとなりました。
日本では 1982 年にダイヤモンド社から初版が出版され、1985 年に新版が出ています。
ポーター氏は、『競争の戦略』において、企業の取るべき戦略を「ニッチ市場への集中」「全体市場でのコストリーダーシップ」「全体市場での差別化」の 3 つに集約しました。
このコンセプトは、現代の経営においても十分に利用できます。
たとえば引用ドットコムは、ニッチ市場への集中です。コストリーダーシップの代表例は 1950-1970 年台のフォード、差別化の代表例はポータブル音楽プレイヤー市場を席巻した iPod と言えるでしょう。
同書のコンセプトは、原著の発売から 40 年経った今も全く色褪せていません。ビジネス書界随一の古典として、今後も多くの書籍に引用され続けるのではないでしょうか。
第 2 位は、エリック・リース氏の『リーン・スタートアップ:ムダのない起業プロセスでイノベーションを生みだす』でした。
第 1 位の『競走の戦略』と比べるとかなり新しい本で、原著は 2011 年秋に、邦訳はその半年後に発売されました。
エリック・リース氏は、自身の起業経験から、スタートアップでは闇雲な「やってみよう(Just Do It)」精神が会社を潰すことになると気付きました。
同氏は、顧客に価値を提供しないもの、それが検証できないもの、学びにつながらないものを全てムダだと説きます。
同書では、新製品の商用化をできる限り無駄なく実施する方法として、実用最小限の製品(MVP)をつくり、構築・検証・学習の仮説検証サイクルを高速で回転させることが提唱されています。
同書は、スタートアップやベンチャー企業において、あるいは大企業の新規事業部門においても広く読まれています。新規事業の関係者の間では必須の教科書のような存在です。
第 3 位は、クレイトン・クリステンセン氏の『イノベーションのジレンマ : 技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』でした。
原著は 1997 年に、邦訳版は 2000 年に発売され、いずれもベストセラーとなりました。
クリステンセン氏は「顧客志向の優れた経営が巨大企業を滅ぼす」と主張しました。
直感的な主張ではないため、この主張は大きなセンセーションを巻き起こしました。
クリステンセン氏は、既存事業で成功している企業ほど、イノベーションについてある種のジレンマを抱えると指摘します。
既存事業の顧客を大事にしてしまうことで、新規事業にとって合理的な意思決定ができなくなるのです。
『イノベーションのジレンマ』には、この理論を補強する 2 つの続編があります。
『イノベーションへの解』では、イノベーションを組織的にマネジメントする手法を示されました。
また、『イノベーションの DNA』では、イノベーションの担い手の持つリーダーシップの性質が紐解かれました。
同数第 3 位は、マイケル・ポーター氏の『競争優位の戦略 : いかに高業績を持続させるか』でした。ポーター氏の著作は、TOP5 に 2 冊がランクインです。
原著、邦訳版ともに 1985 年に発売されており、経営学の古典的名著の 1 つです。
同書では、バリュー・チェーンのコンセプトが打ち出され、企業の営業活動がシステマチックに整理されました。
バリュー・チェーンを調整して、収益性の高い市場を選び、競合に対して優位な位置取りをすることで、利益を生み出せるというのが、ポーター氏の主張です。
『競争の戦略』と比べると、企業の内部活動にも目を向けられるようになりました。
ポジショニング派の最重要人物がケイパビリティ派の発想を受け入れた形とも評せますが、ポーター氏によると、利益を出す上で最重要な要素はあくまでもポジショニングであり、ケイパビリティはその補完的な位置付けだとされます。
第 5 位には、ピーター・ドラッカー氏が登場。『現代の経営』がランクインです。
原著は 1954 年に、邦訳版は 1965 年に発売されました。今回ランクインした中では最も古い書籍です。
ドラッカー氏は、同書においてマネジメントを独立した機能として捉え、その役割を明示しました。
そして企業経営の目的を「顧客の創造」と定義し、従業員や社会に対する企業の貢献責任についても強調しました。
今でこそ直感的に理解できる考え方ですが、60 年以上前の時点で体系化されていたと思うと、ドラッカー氏はとんでもない先見の明があったと言えるでしょう。
ドラッカー氏といえば『マネジメント』が有名ですが、同氏は『現代の経営』でマネジメント分野でのリーダーとしての地位を確立しました。
上位 5 冊の画像を見てお気づきでしょうか。
三谷宏治氏の『経営戦略全史』が 5 冊すべてを引用しています。
『経営戦略全史』は、経営戦略の全体像をつかむ上で、筆者も折に触れて参考にしている本で、本記事でも、同書の記述を参考にさせていただきました。
同書を読むことで、20 世紀以降の経営戦略の歴史と、各戦略の特徴を概観できます。
同書をベースにして、興味のある引用書籍を深堀りしていくと、経営戦略の理解が深まるかと思います。
平易で親しみやすい文体で書かれているので、経営戦略の初心者の方には特にオススメです。
引用ドットコムでは、引き続きビジネス書・技術書・実用書を中心に引用書籍を調査していきます。
調査が進むにつれてランキングも変動していきますので、書籍の更新の際はぜひ順位をチェックしてみてください。
それでは、調査書籍が 200 冊になったらまたお会いしましょう。それまでお楽しみに!
(執筆者:戸枝)